シリコンバレー旅行記

3/10から3/17まで、サンフランシスコ/シリコンバレーを旅してきた。基本はサンフランシスコ市内に泊って市内を観光しつつ、シリコンバレーで活躍している日本人と個人的にアポを取って話したり議論したり。
もともと行こうと思ったきっかけは、4月から放送と通信の融合を目指すITベンチャーに入社予定なため、入社前に本場のシリコンバレーで活躍している人に話を聞いてみたかったというもの。
それをTwitterで呟いていたら、現地に留学してたから知り合いを紹介してあげるよ、とか、同じ時期にシリコンバレー行くので現地で一緒に回りましょう、とか色んな人が現れてきて、具体的に話が進む。まさにTwitterなくして今回の旅はなかったでしょう。

以下こんてんつ。

1:訪問リスト
2:面白かったトピック
3:今後の身の置き方

1:訪問リスト

まずは訪問リスト。以下、会った日を時系列順に。

  • 船木信宏氏http://zuzara.com/
    • SmashBooth, Inc Founder
    • 朝の9:40からMountain view stationのカフェにて。出勤前の地元アメリカ人たちに交じって日本人二人が怪しげに(?)議論。コーヒーがうます。
  • 赤坂明氏
    • 株式会社フジコム企画室室長
    • California Avenueの中華料理で夕食
  • Niwa Yoshimasa氏http://twitter.com/niw
    • Twitter社のエンジニア
    • Twitter経由でアポを取り、オフィスを案内して貰う。その後サンフランシスコ市内のマレーシア料理店にて、日本人エンジニア4人と夕食。

というなんとも豪華なメンバー。よくこれだけアポが取れたものだ、といまだに思う。笑

2:面白かったトピック

面白かったトピックについてはTwitterで全部呟いたので、以下Twitterから引用ということで。

  • サンフランシスコ/シリコンバレーから日本に帰国。とてつもなく突き抜けていて、とんでもない日本人が世界にいっぱいいて、相手のレベルがすごすぎてあたかも自分がすごくなったという錯覚を起こすくらいの、麻薬のような旅だった。 
  • サンフランシスコのTwitter本社を訪問したときに、日本市場担当の方になぜか名刺を貰った。日本語が堪能な方で、日本のTwitterユーザーを代表したつもりで「日本でいつもTwitterを使っています。Thank you」とかと挨拶してきたw 
  • その前のTwitterにわさんとの会話。「アメリカの方が仕事が早く終わって帰るイメージがあるが、仕事時間は変わらない。日本は大抵の人が朝出勤するのに1時間以上かかって満員電車でぐったり、頭働くのは正午から。アメリカはオフィスから家が近く、時間がそのまま前にシフトしたイメージ」
  • Twitterのにわさんを訪問後、日本人エンジニアの方たちの夕食会に連れて行った貰った。@hokayanさんに遭遇。話している内容が異次元だったw iPadは買う買わないではなく、何台買うかという議論にw 
  • ここで一息、どうでもいい小ネタ。「サンフランシスコ」は中国語で「旧金山」と書くらしい。読み方は「ジュチンセー」。あ、これは上海語の発音か。あいにく上海語しか喋れないので、北京語(標準語)での読みは分からんw
  • サンフランシスコでのiPhone普及率は90%以上らしい、子供からおばあちゃんまで。子供に一番人気なのは「Zoo box」というアプリ。いろんな動物の写真が画面に出て、傾けるとその動物の泣き声がする。今度日本の子供にも試してみようw 
  • 平日の昼間に公園で、お母さんと子供が「Zoo box」で遊んでいるという。その光景を直接見たわけではないが、夕食会の時の会話情報より。おーこれがイノベーションか! 
  • そして小さい頃よりiPhoneに慣れ過ぎてしまった子どもたちは、家のテレビを操作する時に、テレビの画面を指でスライドさせてチャンネルを変えようとするという。チャンネルが変わるわけないが、その気持ちはなんかすごい分かるw 
  • おれもDelta Airlineで成田⇔SFの飛行中、座席の前にある、ゲームと映画と音楽が一緒にできる&見れる&聴ける画面の操作をする時、リモコンを使わずに、画面をタッチパネルだと思ってずっと指でスライドさせようとしてた件。笑 
  • Webビジネスでのマーケッターとプログラマー。日本ではマーケッターの方がイメージがよく、待遇・地位が良いイメージがある。シリコンバレー(に限らず、アメリカ全部に言えることかもしれないが)では逆で、プログラマーの方が待遇・地位が高いイメージが。 
  • 渡辺千賀さんに言わせれば、マーケッターとプログラマーの必要割合は1:5でプログラマーの方が重要。Twitteなどの最新のWebビジネスを見ても、マーケッターとプログラマーが隣合わせでサービスを構築できる環境が重要。海外に開発を置くのはもう古いと。 
  • 今20才の人と今40才の人が成功する方法は違う。プログラマーの方が需要あるしMBAベンチャーキャピタル、コンサル、ビジネス開発というキャリアよりも、20才の人達は今からでもプログラミングを取得した方が将来の道が広がるかもね。by渡辺千賀さん 
  • 「日本のITベンチャーが世界で戦っていくには何が必要でしょうか」という曖昧な質問に対しては千賀さん「英語で事業をする。そのために情報源を思い切って英語にして、日本語を捨てるくらいの覚悟で。そうすると海外の動向、尖ってるベンチャーが分かるよ」とのこと。
  • それで、海外の英語の情報源のサイトをいくつか教えて貰った。Mashable, Venturehuks, hackernews, Y combinatorなど。興味ある方は覗いてみて下さい、シリコンバレーの面白いITベンチャーの情報があるかもよ。 
  • SV訪問中、色んな人に勧められた海外留学。3,4年働いた後に、海外の大学/大学院へ正規過程で留学することは確かにキャリアのリセットになりうるかも。だが本当にアントレプレナーシップを持つ人は留学なんてしないだろうな。 
  • シリコンバレーの若いスタートアップ起業家たちの間で、収益が少なくてコストカットで自分の食費代を浮かすために、一日三食カップラーメンでも1年位生きていける能力を、「ラーメンprofitability」と言うらしい。
  • アメリカの尖ったITベンチャーby渡辺千賀さん。Imvu:3Dオンラインチャット事業、NING:SNSをつくるwebサービスMEEBO:色んなチャットを一元化して管理するサービス、Slide share:スライドをシェアするサービス、などなど。 
  • バイオベンチャーはマーケッターが全て。マーケッター、つまりテクノロジーをどのフィールドに当てはめるかを見抜く人、ということ。いい例が最近日本でも話題になっているニューロスカイ (http://ow.ly/1oNdT )。 
  • ニューロスカイ は当初、脳波測定技術を医療に応用する、というコンセプトだったそうな。ところが需要が全くなく、そこに優れたマーケッターが登場し、脳波測定技術をゲーム・おもちゃに応用する、というふうにコンセプト変更。そこから爆発的に伸びたとか。 
  • 大学発バイオベンチャーは、アメリカで育てた方が早いかも。はじめからアメリカ市場で特許を取り、日本みたく高品質でなくてもアメリカの大企業が面白がってベンチャーの製品を買ってくれるから。日本だと大企業はベンチャーの製品をなかなか買わない。by桝本社長
  • 「ゲームアプリよりも、アマゾンなど異業種からのiPhoneiPadアプリ参入が注目されてる」by川口氏
  • そいやベンチャーキャピタルの川口氏にも言われたのは「人の命に関わるような事業、例えば介護ロボット開発、新薬開発のような、はVCからみたらリスク無限大。なので普通のVCはなかなか出資しない。起業するならそのあたり気をつけた方がいいよ」とのこと。
  • ということは技術オリエンテッドのバイオベンチャーで医療に応用するような事業モデルは、VCから金が集まりにくく、FDAの承認得たりする必要あり→製品化に時間がかかり、利益はあたればでかいけどなかなか出にくいということか。まあ日本でも同じなのだろう。
  • ITベンチャーなら小僧二人がすぐにプログラム書いてサービスを作れるけど、バイオの場合技術が分かりにくい、技術も大学や研究機関にあって年のいった教授たちが持っている事が多いから、小僧二人が事業作ります、っていうのはなかなか難しいのよね。by千賀さん 
  • ホームパーティーパーティーの前に、金島さんと個別に話す機会も設けて貰った。「自分のいる環境にはよく考えるべき。グローバルにビジネスイノベーションと事業開発がやりたければ、最終学歴を米国で取得し一度は外国で就職するべき。」またまた海外留学のススメw
  • ベンチャーは増やそうと思って増えるものではない。やりたくてしょうがない奴らが勝手にやっていくもの。」by金島氏 
  • シリコンバレー(というかアメリカ)で働くどの人と話しても話題に出るのが、ビザの問題。種類にもよるが、レイオフや会社がサポートしてくれないとビザがとれずに国外撤去を余儀なくされる。常に国外撤去というリスクと隣り合わせでも、みんな生き生きと働いていた。
  • 「天気が暖かくて、お金も貰わずにバカなことを考える奴らがいっぱいいる。そのアイデアの多くが屍となり、ごくたまにfacebooktwitterみたいなのが生まれる。日本との違いは成功事例があるかと、そもそもの絶対数の問題。」by VC 川口氏 
  • シリコンバレー旅行で訪問した人の中で最も異色の経歴が船木さん。慶応SFC在学中に起業後、コネクションもないまま、ビジネスアイデア一つでシリコンバレーに飛び込み、Senzooという会社をつくって、その会社からサポートする形でビザを獲得したという。
  • 船木さんとは朝の9:40からMountain view stationのカフェにて。出勤前の地元アメリカ人たちに交じって日本人二人が怪しげに(?)議論。スタートアップをやる人は思考がMBA、VC系とも一味違うなと感じる。そしてコーヒーがうます。 
  • 「なんか面白いビジネスアイデアあるの?」と聞かれ、いつぞやTwitterで呟いた「人の髪の毛から遺伝子を解析して、将来の禿げる確率をフィードバックしてあげるビジネス」と答えたところから一気に議論が白熱。 
  • すぐやっちゃおうよ!友達10人から髪の毛集めて大学の装置使って測定して結果をフィードバックしてみなよ。初期投資いくら?100万円くらい?ならバイトして貯めちゃえば?それで会社つくってこけても社員雇わなければ血を見ずに済むしノーリスク♪ by船木さん 
  • 髪の毛も新入生から集めたり、美容室で集めてサンプルが多きくなれば面白いんじゃない?という議論を経て、これが起業家精神か、というのを垣間見た気がする。そして今、禿げの遺伝子と将来の禿げる確率を対応させる論文を漁ってるなう。どこで読んだっけな。 
  • 別れ際「エンジニアとして人から言われたものを作るのは虚しいよ。自分のアイデアがあるなら今すぐトライすべし、じゃなきゃ一生できないよ。」というすごーい重みのある一言を頂く。きっとこの人は海外留学よりも自分で事業をつくっちゃうんだろうな、と思った瞬間 
  • さて、そろそろスタンフォード大学Ph.Dの宮崎さん、フジコムの赤坂さんとの夕食会での主な話題だったアメリカ大学院の留学事情を呟いて、 をひとまず〆ませう。アメリカの大学院への入試はテストというよりも、就職活動に近いらしい。
  • 入試合否を決める三つの要素は、①テスト、大学の成績、②エッセイ:志望動機書、③推薦状、らしい。日本の大学院では基本的に①が最も重要視され、アメリカの大学院では②、③が重要視される。テストは必要最低限取れば、という意味で、就職活動に似てるとのこと。(*1) 
  • ①のテストはいわゆるGRE,TOEFL,MBAならGMAT,大学・大学院などの成績も評価に加味されるとか ②の志望動機書はそのまんま、③の推薦書は、今までの研究室や職場の上司に書いてもらうのが一般。もちろん有名な人、地位が高い人に書いてもらうほど◎ 
  • 推薦書、有名だけど1,2回しか話したことのない人には書いてもらわない方が良いと。今までで一緒にプロジェクトをやってきたなど、自分のことをある程度知っている人に書いてもらうべきであると。まあそれはそうだわな。
  • 留学生の中でもインド、シンガポールからの留学生が多いとのこと。インドの留学生は、発音が一番聞き取りにくいくせに一番ガツガツしているとか。カタカナ英語よりもよっぽど聞きとりにくいとのことw 
  • シンガポールにはA-Starという人材育成制度があり、毎年20人(詳細な人数は定かでないが)程度のエリート学生にアメリカの大学院に留学させ、現地での学費・生活費を全部支給するという。大学院修了後は、シンガポールの研究機関に戻って研究するのだとか。
  • 英語が聞き取れるようになるのに1000時間かかるというのはあながち嘘ではない。ただしアルクの教材などは飽きるから1000時間続かないのが普通。という観点から、英語勉強には字幕付きのSFやクライムドラマ、映画をおススメされた。 

3:今後の身の置き方

という経験を踏まえて、今後自分はどうしていきたいのか。大きく分けて、4〜5年働いた後に海外の大学院に留学したいなと思ったこと、自分の手でプログラミングをしてWebサービスを作れるようになる必要があるな、と思ったこと。

海外留学に関しては考えた事はなくはなかったが、漠然とした願望のみだった。「〜できたらいいな」的な願望で、どこかで自分の思考に制限を掛けていて、例えば、入学試験難しいんだろうな、学費・生活費高いんだろうな、卒業した後の就職先どうするよ、とか、できない理由ばかりが目についていた。

今回の訪問で、スタンフォードの学生、その外の方との議論を通じて、思考の制限・壁は取れた気がする。入学試験に必要な要素は把握できた。(概略だけど、*1)。学費も会社の資金調達見たくデットでお金借りたり、奨学金を取ったり、(幸いに日本で修士号を取得予定なので)給与が貰える博士課程で留学したりと、方法は考えればいくつかありそう。卒業後も大学院でのネットワークがその後の就職・転職に活きてくることが多い。不透明要素が実現可能性を低くさせるので、具体的な点が色々分かって一歩前進ですな。あとは過度な目的意識がむしろ弊害になり得るなと。日本にいる時に想像してたものより、向こう行ってから起こる事の方がはるかに予測がつかない事が起こるから(実際一週間旅行しただけで起きた。笑)ので、刺激満載な生活があるはず。

じゃあ「今」すぐ行けばいいじゃん?って話だが、これも答えは簡単。少なくても現時点で俺は内定先のITベンチャーに入社することに後悔はないし、むしろ楽しみ&ワクワクしてる。要は今の環境がワクワクしてて、外に高みと刺激を求めたい、という贅沢な悩みなのだ。
もし日本国内の大学院博士課程への進学が決まっていたら、すぐさま断ってアメリカ大学院へ受験をしてたと思うけど。笑

大学院留学はキャリアの一時リセットと人生の余暇。これくらいの感覚で行こう。

次は、自分の手でプログラミングをしてWebサービスを作れるようになる必要がある、ということについて。

渡辺千賀さんが言っていた事に限らず

  • マーケッターとプログラマーの必要割合は1:5でプログラマーの方が重要。Twitteなどの最新のWebビジネスを見ても、マーケッターとプログラマーが隣合わせでサービスを構築できる環境が重要。海外に開発を置くのはもう古いと。 
  • 今20才の人と今40才の人が成功する方法は違う。プログラマーの方が需要あるしMBAベンチャーキャピタル、コンサル、ビジネス開発というキャリアよりも、20才の人達は今からでもプログラミングを取得した方が将来の道が広がるかもね。

プログラマーの地位が高いのは俺自身が感じたことであるし、最新のWebビジネスはまずサービスを構築してユーザーに使って貰ってマーケティングでどんどん改善させていく、ようはサービスがつくれなければ話にならない。スタートアップのベンチャーでもプログラマーがいないと資金調達や提携の交渉が進まないなんてこともあるくらい、重宝される。一方視点を日本に向けて見ると、内定先の企業も差別化の源泉は高い技術力に基づく経験・実績だったりする。ので、まずは自分一人でWebサービスを作れるくらいの力はつけなきゃな、と。Ruby,PHP,Javaあたりかなあ。

そして何気に一番印象に残っているのは船木氏の

エンジニアとして人から言われたものを作るのは虚しいよ。自分のアイデアがあるなら今すぐトライすべし、じゃなきゃ一生できないよ。」

という一言。お会いした方はエスタブリッシュメントな人が多い中で、船木氏は異色の存在だった。俺のビジネスアイデアに「それすぐやちゃえばいいんじゃない?」と言ってくれるような人。ああこれがアントレプレナーか、そして起業家精神は、起業家精神を持った人と共に過ごすことでも養われるのだと確信した。「将来起業します」とか大層な事を言うつもりはないが、4月から新卒で組織に所属しても、組織の壁とかなんちゃらとかいろいろあるが、自分のアイデアは必ず実行していく人にはなってやる。

というような事をスローガン株式会社取締役の織田一彰氏(シリコンバレーの日系のVCのアドバイザリーをいくつもやっているとか)に話したら、「アメリカの中でもシリコンバレーがスタンダードじゃなくて、シリコンバレーが異常なんだよ。と言う事も頭に入れときー」とあっさり言われたw これについてはいずれまた考察しよう。