東大i.schoolに行って来た。【イノベーションのメソトロジー?】
今日は、最近話題の東大i.schoolのオープンセミナーに行って来た。
イノベーションを起こすのは一握りの天才なのか?それとも伝播可能なのか?と言うテーマ。
講師には、米国・Portlandに本拠を構え、戦略的デザインファームとして世界的評価を受けるZibaの戦略担当ディレクター・濱口秀司氏や、スタンフォード大学d.schoolのMichael Shanks教授という豪華なメンバーが。
詳しくはこちら→http://ischool.t.u-tokyo.ac.jp/programs/seminar/symposium_aug10
さて、折角なので、その内容をこのブログ上で一部シェアしよう。
早速、濱口氏の早速三つの問題提起から始まる。
1.イノベーションのメソトロジーある? 2.そもそもイノベーションの定義って何? 3.てかアンタ誰や?
ここらへんはさくさく話が進み、結論から言えば
1.イノベーションのメソトロジーある? →ないと思います。 2.そもそもイノベーションの定義って何? →明確にはないと思います。 そもそもイノベーションに溢れていたら、 世の中しんどいでしょ。。笑 3.てかアンタ誰や? →詐欺師?イノベーションできるできる詐欺師ではないです。笑
という抜群のつかみから入る。
すげえ、これがプロフェッショナルのプレゼンか、と感嘆する俺。
そして話は確信に。話は色々な領域に及んだが、自分的にまとめれば以下の三つになる。
1.イノベーションのメソトロジーはないけれど、プロトコルはある。 2.イノベーションを感じる基準 3.(単純⇔複雑)、(具体⇔抽象)の4つのマトリックスの間で 思考を巡回させ、それをモニターすること。
1.イノベーションのメソトロジーはないけれど、プロトコルはある。
メソトロジーとは、A,B,Cが揃えばイノベーションが起こる、という要素。つまり、A+B+C→イノベーション。
一方、プロトコルとは、大抵のイノベーションにはA,B,Cがある、という要素。つまり、A+B+C+α→イノベーション。
で、そのプロトコルが、次のイノベーションを感じる基準だったりする。
2.イノベーションを感じる基準
そもそもイノベーションとは何ぞや?
社会的価値創造?技術革新?新しい切り口?はたまた、スティーブ・ジョブス?←
イノベーションの定義は山ほどあるが、
濱口氏の定義とは
過去の延長の先にない0.5歩先
↓
明日の非連続性
↓
Shift(→)
である。
そしてイノベーションの定義は無数にできるが、イノベーションを見分ける基準は?というと、ある程度収束されるのではないか。
ここで、濱口氏が過去に扱った三つの商品に関して、どれくらい「イノベーションっぽいか?」に関して問いかけた。
a.P&Gのシャンプーで シャンプーとリンスの別ブランドを纏めた。 つまり、separate→統一というShift。 b.Colemanの火災探知機。 レッドオーシャンだった火災探知機市場に参入 一年目で39%のシェアを握った。 他の会社は技術のみをアピールしていたところに、 部屋別に火災探知機を変える、 というコンセプトを持ち込んだ。 つまり、technology→room別、というShift。 c.M-SystemのCompact Flash Memory 世界で初めてのUSBメモリー 一年後には0だった市場が1millionに成長。 つまり、storage→experience、というShift。
どうだろうか。そんなのイノベーションじゃねーよ、と感じるだろうか?
それともイノベーションっぽいと感じるか。
気付いただろうか。
そう、イノベーションを見分ける基準は
①(その当時では)見たこと・聞いたことがない
②与えられた時間内に実現可能
③議論を生む(賛成vs反対)
である。
この三つを図式化すれば次のようになる。
通常、
①見たこと・聞いたことがない度、と
②与えられた時間内での実現可能性
は反比例する。
その半比例曲線から右上、つまり見たこと・聞いたことがなく、与えられた時間内に実現可能な領域へ抜け出すのがイノベーションであり、だらかこそ議論を生む。
数式にすれば、次のようになる。
!? − ? = !
(訳)!?(そんなの聞いたことねーぞ=①の見たこと・聞いたことがない度)から、?(ほんとにできんの?=②の与えられた時間内での実現可能性)を引くと、!(お、意外とできるじゃん=③の議論、賛成vs反対)になる。
とりあえず長くなりそうなので、
3.(単純⇔複雑)、(具体⇔抽象)の4つのマトリックスの間で思考を巡回させ、それをモニターすること。
のトピックは明日また書きます。
感想としては、イノベーションとは技術革新ではなく、
人の認識・価値観・習慣のShiftであるという概念が深まった。
あとはイノベーションとは0.5歩先の未来、という概念も。
つまり、受け入れられる程度の変化、であることが重要なのだ。
大学、大学院とサイエンスの世界に身を置いて来たが、
サイエンスの提示する未来とは、恐ろしいほどの変化を人間社会に強いるものだな、と今更ながら気が付いた。
再生医療、太陽電池、電気自動車。
どれも社会制度に絡むような、大きな変化である。
しかし濱口氏のあげた上のイノベーションの例(シャンプー、火災探知機、Flash Memory)はどれも、受け入れられる程度の変化であるものだった。
そして今の世の中、イノベーションと言うと、どうも恐ろしいほどの変化を強いるニュアンスの方が強いのかなと。